「青鞜社」と「新婦人協会」の違いとは
《青鞜社》は文学的思想の文芸結社で、大きなものを動かすほどの力は無い組織です。
《新婦人協会》は請願運動を展開して多くの賛同者や同志である女性を集め、それを大きな力にして、選挙で婦人解放運動に協力的な政治家を応援するなど、政治などといった大きなものを動かす力がある組織です 。
《青鞜社》1911年~1916年
(1913(大正2)年東京巣鴨の岩野泡鳴宅に集まった「青鞜」の同人たち。右端が平塚雷鳥(旺文社・図説日本の歴史より))
《青鞜社》は1911年、当時の男尊女卑の象徴でもある、家父長制度から女性を解放するという思想と、女性の近代的自我の確立を目指し、平塚雷鳥の呼び掛けによって賛同した女流文学者たちが集まりで、平塚雷鳥を中心にして女性だけによる文学的思想を持つ文芸結社となります。
設立と同時に、文芸機関誌『青鞜』を発刊し、この文芸機関誌『青鞜』の発刊第1巻第1号に、平塚雷鳥が著した「元始、女性は太陽であった。真性の人であった。今、女性は月である。他に依って生き、他の光によって輝く、病人のような蒼白い顔の月である」が創刊の辞として発表されて有名になります。
これは、この時代の日本において婦人解放運動の宣言として衝撃的な内容として注目され大きな影響を及ぼしました。
その後も文芸機関誌『青鞜』の誌上で、活発な文学思想を展開しますが、1915年に平塚雷鳥の私生活・個人的事情などで、平塚雷鳥自身の生活と文芸機関誌『青鞜』の編集活動の両立が困難になり、伊藤野枝に文芸機関誌『青鞜』の編集権を譲って、平塚雷鳥は一時的ではあるが女性解放運動から離れます。
1916年には、以前から《青鞜社》の経営状態は悪く、加えて伊藤野枝と大杉栄との恋愛によって起きた事件の影響もあり、文芸機関誌『青鞜』は無期休刊(廃刊)になり、《青鞜社》も解散状態となりました。
《新婦人協会》1919年~1922年
(新日本婦人の会より)
《新婦人協会》の設立は、《青鞜社》の時とは違い政治色がかなり強くなっています。
この時の平塚雷鳥が考える《新婦人協会》は、女性に不利な法律の削除運動や婦人の社会的・政治的権利獲得を目指し、平塚雷鳥・奥むめお・市川房枝らを中心にして請願運動を展開し、政府や議員などに対して政治的要求や交渉を直接することを可能にし、さらに婦人解放運動や活動を力強く進めるため、より多くの同じ思想を持つ女性を集めて、女性だけの団体運動の必要性を感じていたと考えていました。
そして、それが現実となり日本初の婦人団体と言われるようになります。
《新婦人協会》の機関誌として『女性同盟』を発刊し、これも政治色の強いものとなります。
《新婦人協会》は設立から約3年の短命に終わるも、治安警察法第五条の一部改正に成功し、婦人弁護士制度制定を勝ち取るなど、部分的ですが女性の政治的権利獲得に重要な成果を挙げて成功したと言える戦前唯一の婦人団体として、日本の婦人運動史上に大きな足跡を残しています。
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